■連載 FRBの歴史を知るならこれだ! 図書の案内
アラン・メルツァー著/小谷野俊夫訳
刊行予定日2026年3月10日発売!
上巻 ISBNコード978-4-909560-43-8
下巻 ISBNコード978-4-909560-44-5
上下巻いずれも本体価格 6,000円
A5判・横 上巻約448ページ 上巻約368ページ
【内容】
本書は、アメリカの金融経済学者・金融史家として名高いアラン・メルツァー(Allan H. Meltzer、1928年2月6日〜 2017年5月8日)の著書である A History of the Federal Reserve Volume I, 1913-1951(2003年、シカゴ大学出版)の全訳であり、連邦準備制度や金融政策がどのような変遷を辿ったかを分析したものです。そのなかで、どのような経済・金融学説や思想に基づいて制度が構築されたのか、誰によって政策が策定されて運営されてきたのかを膨大な文献、議事録、議会証言、メモなどに基づいて多面的に執筆されています。また、連邦準備制度と財務省との対立と協調、連邦準備制度内における準備局(後に連邦準備制度理事会)と地区連邦準備銀行(中でもニューヨーク連銀)との主導権争いが詳細に述べられいます。これらの対立や争いが、当時の経済・金融情勢やそれに関する政策思想とどのように関連していたのか、社会科学的に分析された歴史書です。
【目次】
上巻
訳者はしがき
第1章 序文
第2章 連邦準備法前の中央銀行の理論と実際
第3章 最初の時代 1914年から1922年
第4章 新たな問題が生じ、新たな手続きを模索した時代 1923〜1929年
第5章 なぜ金融政策は1930年代に失敗したのか
注(上巻)
下巻
第6章 後部座席にいた1933年から1941年
第7章 財務省の管理下にあった1942年から1951年
第8章 結論ー初めの37年間ー
データーについて
参考文献
注(下巻)
訳者あとがき
各章の特徴
・第1章では本書の構成と概要が述べられています。メルツァーは、現在および未来の連邦準備制度を理解するためにはその歴史を知ることが重要だと強調しています。
・第2章では、イングランド銀行の経験やイギリスにおける金融経済理論の発展など、連邦準備制度設立前おける中央銀行の歴史が説明されています。
・第3章では連邦準備制度の設立に至ったアメリカの事情や連邦準備制度設立後における第一次世界大戦時の戦時金融などが説明されています。
・第4章では国際金本位制の回復にニューヨーク連銀のベンジャミン・ストロングが尽力したこと、イングランド銀行のモンタギュー・ノーマン総裁との協力や、公開市場操作が発達したことなど述べられています。
・第5章では1929年の大恐慌の後、なぜ金融政策は景気を回復させることに寄与できなかったかを解明しています。
・第6章ではローズベルト政権によるニューディール政策の下で連邦準備制度による金融政策の役割が低下したこと、また議会により連邦準備制度理事会と公開市場操作委員会の規定が明文化されたことや、銀行業と証券業の分離を定めた1935年のグラス・スティーガル法や預金保険制度の創出など制度改革が説明されています。
・第7章が対象とする期間は、第二次世界大戦の戦争資金を賄うための国債発行が優先されたことから金融政策が財務省に牛耳られた時代と、大戦後にアメリカの好景気によりインフレが懸念されるようになり連邦準備制度が金融政策の独立を求めて財務省との間で締結した1951年の連邦準備-財務省アコード(合意)の成立までである。この合意によって中央銀行の独立性が認められといわれている。なお、この間に1946年雇用法が成立し、連邦政府は雇用を最大化する役割を担うことが明記されています。この法律は連邦準備制度には明確に適用されていませんでしたが、1977年の連邦準備法改正により連邦準備制度は雇用の最大化と物価の安定という二重の責務を正式に負うようになりました。
・第8章は、連邦準備制度の最初の37年間を概観し、その歴史を評価しています。
訳者が翻訳しようと思った動機と訳出にあたって注意した点
訳者より − 本書の翻訳に取り組むきっかけとなったのは、連邦準備制度に対するいくつかの素朴な疑問でした。例えば、中央銀行としてアメリカに連邦準備制度が設立されたのは、なぜ日本銀行の設立(1882年)よりも約30年も遅い1914年だったのか。なぜ、連邦準備制度は単一の中央銀行ではなく、12行の地区連邦準備銀行による分権的なシステムとして構築されたのか。また、設立当時のアメリカにおいて、決済システムがどのような課題を抱えていたのかというものです。 これらの疑問を解消し、理解を深めるため、アメリカの金融政策や連邦準備制度について学び続けてきました。その過程で、連邦準備制度の歴史的発展に対する興味がいっそう高まり、本書の翻訳に取り組むことにしました。 翻訳にあたっては特に次の2つのことに配慮しました。金融ではさまざまな用語が同じ意味で使われています。それゆえに本書の翻訳では統計量と対応する用語に統一することにしました。また、原著者の意図を正確に伝えることを心がけ、場合によっては引用元にあたって意味を確認し、読者が理解しやすい表現を選択しました。この過程で原著者の明らかなミスと思われる事項は修正しました。こうすることによって、内容がより理解しやすくなったのではないか思います。
著者紹介
アラン・メルツァー(Allan H. Meltzer, 1928年~2017)カーネギーメロン大学の著名な政治経済学教授で、ハーバード大学など多くの大学で教鞭を執った。米国大統領経済諮問委員会の委員や連邦準備制度理事会のコンサルタントとしても活動し、日本では日本銀行経済研究所の顧問を務めた。また、IMF改革を提言したメルツァー委員会の委員長を務めた。著作は『Keynes’s Monetary Theory: A Different Interpretation』(金子邦彦・秋葉広哉訳 『ケインズ貨幣経済論 マネタリストの異なる解釈』同文館出版)や『A History of the Federal Reserve Vol. I&II』(本書はVo;.Iの訳書)をはじめ多数がある。生涯にわたり経済学と公共政策に大きな貢献をし、多くの名誉賞を受賞した。
訳者紹介
小谷野俊夫(こやの としお)静岡県立大学名誉教授。1969年早稲田大学政治経済学部卒。1975年ペンシルベニア大学ウォートンスクール修了(MBA)。第一勧銀調査部ニューヨーク駐在シニア・エコノミスト、DKB総研経済調査部長を経て静岡県立大学教授。翻訳書に、『アメリカの金融政策と金融市場』(2000)東洋経済新報社、『連邦準備制度と金融危機』(2012)一灯舎、『マクミラン経済学者列伝 ケインズ』(2014)一灯舎、『ケインズ全集 第21巻:世界恐慌と英米における諸政策-1931〜39年の諸活動』(2015)東洋経済新報社、『サミット 1994年ブレトンウッズ交渉の舞台裏』(2020)一灯舎、『ケインズ全集 第20巻:雇用と失業対策の再考ー1929~31年の諸活動』(2023)東洋経済新報社、『マクロ金融危機入門』(2024)慶應義塾大学出版会などがある。
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